リカバリーポルノ 31(R18)
かつて建翔は、大学時代に考えたことがある。
もしも、羽純が女だったら。首から下が女性の身体だったらと。だとしたら自分は彼を好きになっていただろうと。
今、華奢な男を目の前にして、こいつの首から下に違う肉体があったらと想像してみる。
そこには違和感しかなかった。
自分は、このままの羽純が好きなのだ。男性器がついていて、胸は真っ平らで、喉仏の出っ張りがある、この身体が。
建翔に対して、怒り、泣き、そして愛を乞い、全てをぶつけてくる感情の塊が好きだった。羽純の全てに惹かれていた。
いつの間にか、愛や恋を越えて、魂を持っていかれていたのだ。
「全部触ってもいい?」
「うん」
タオルを取って、股間にもそっと触れる。
「……ぁ」
柔らかな果実が、触れた途端ビクンと脈打った。
そして手のひらを押し返すようにして育ち始める。建翔の手は羽純の形を憶えていた。指になじむ感触。それが嬉しい。
唇を離して、押し倒し、肌にキスしようとしたらとめられた。
「あ、ダメだ」
「何で」
「ここの水は衛生状態がよくないから。……舐めないでくれ」
「そうなのか。だったら、何か、濡らすものないか」
「……あ、ああ」
羽純は身を起こし、ベッド脇のテーブルから小さなアルミ缶を手に取った。
「シアバター。これ、ここの村で作ってるんだけど、俺も作るの手伝ったやつ」
「へえ……」
羽純が蓋をあけてクリーム色の塊をすくい、自分の後ろに塗りこむ。足をひらき気味に奥をさぐる姿が健気で、そして卑猥だった。
建翔も甘い匂いのするバターを手にして、完勃ちした自分のモノにすりつけた。ニチニチッと音を立ててこすると、羽純が瞳を蕩かせる。
「ん、ん、も、もう、いいかも、……きて」
「うん」
この五年間、ずっと待ち望んでいた瞬間だ。建翔は羽純と離れてから誰にも触れていない。いつも夢に見ていたのはこの男だけだった。
「俺がどんだけこうしたかったか」
唇をあわせながら、羽純の身体に入っていく。狭い入口から熱塊をグッと滑りこませると、羽純は口元をあげて「ふっ」と嬉しそうに息をついた。
「……いい」
「いいか?」
「うん……。ああ、すごく、気持ち、い……」
「ここ?」
「ん。そこ、感じる。だし入れ、して。そ、もっと」
羽純は欲望に忠実だった。感じ始めたら欲しがるのに際限がなくなる。建翔はこの深い情動に、いつも気づけば我を忘れてのみこまれているのだった。
「こすって。こすって、そこ、ああ、いいよ、いいよ……っ」
切れ切れの哀願と、素直に快感をこぼす唇に、何度もキスをする。羽純は肌を湿らせ長い睫を濡らして嬌声をあげた。
声が大きいのも昔と変わらない。それも愛おしい。
「ここも、つねって」
自分の手で小さな乳首をつまむ。先端だけを指の間からだして、充血した紅の粒を見せてきた。舐めたい気持ちがむらむらとわき起こるが、それを我慢して、指の腹で強くくじった。
「ああ、んっ、いっ、お前の指、大きくてすごく好き」
「指だけか?」
潤んだ瞳で見あげてくる。うっすらと笑った顔は官能的で、そして愛情に満ちていた。
「これも好きだ」
キュッと中を締めあげる。
「凶暴なくせに優しい」
羽純は両足を大きく広げていた。だから身体を起こせば、つながった場所が丸見えになった。
「それに、何度達っても、すぐにまた硬くなる……」
「身体だけ?」
音を立てて抽挿する。深くえぐって、ぐぷりと抜いて、それからまた急激に突きこむ。
「あ、ああっ、ううん、ちがっ、全部、ぜんぶだっ」
両手を枕の上に投げだして、羽純が身悶える。汗が滴り、薄い胸や腹を光らせる。夜になっても気温はさがらない。快感と熱さに目眩がした。
白い肌が揺れるのを見おろして、自身の剛直を荒々しく抜き差しする。快楽が全身を包み、己が獣になった錯覚を覚える。脳内が放出のことだけに支配される。
「あ、はぁ……ッ、いい、いいッ……」
羽純の全身が、小刻みに震え出した。刺激に反応して、達きそうになっているのがわかる。
「いいか?」
「うっ、うん……ああ、すごい、やっぱ、お前は……全然、ちが……っ」
「何?」
茫洋となった相手がもらした言葉に、思わず食いついてしまった。
「違うって? お前、俺がいない間に、もしかして、誰かと寝たのか?」
羽純の言葉に、嫉妬を覚えて相手のペニスを強く掴む。
五年も離れていたのだ。誰かと寝ていても仕方がないかもしれない。けれど腹は立ったから、バターで滑りがよくなった手で、ヌルヌルとしごいてやった。
「ひっ、……ああっ」
すると、羽純は身も世もないというように乱れた。
「あ、ちが、ちがう……っ、誰とも、寝てなんかないっ」
ああ、はぁ、と喘ぎながら言葉をつなぐ。
「寝るわけがない。……寝るもんか。お前とやっと、ヤれたんだ。他の男とする必要なんて、もうなくなったんだから……っ」
涙目でにらんでくる。その顔が愛おしくて、建翔は上半身を倒して、まなじりにたまった涙だけを舐めてやった。
「俺だって。誰ともしてないんだぞ、この五年」
「……嘘だ」
思考も曖昧になり始めた表情で羽純が呟く。疑っているのではなく、条件反射で言葉を発しているだけといった様子だった。
「嘘なもんか」
グイッと突きこみ、奥の感じる神経をいじめてやる。羽純の好きな場所はもうよくわかっていたから先端でグリグリ押して刺激すると、相手は眉をよせて唇をわななかせた。
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