リカバリーポルノ 32(R18)


「あ、あっ、……ん、んんっ……やっ」
「俺はもう、お前しかダメな身体になったんだよっ」
 身体を起こして、羽純の両太ももを掴む。足を高く掲げて、また強く腰を使った。濡れた音が間断なく響き、それにまた煽られる。
「は、ァはッ、……も、ダメ、……っ」
 羽純が切れ切れの懇願をもらし全身を震わせた。
「も、イくっ……」
「俺もだ」
 そうして羽純が先に際を越える。しなやかに揺れる性器から、白い雫を弾かせて腹にまき散らした。接合部分がきつく締まり、建翔もたまらず絶頂を迎える。
「――ッ、くっ……」
 根元から先端まで、一気に快感が駆け抜けていった。裏筋がドクドクと脈打ち、欲望が吐き出される。その激しい愉悦にいっとき酔いしれた。
「っ、はぁ」
 建翔は満足げにうなると、己の分身を相手から引き抜いた。
 自身が作った穿孔から、もったりとした精液がこぼれでる。ランプに照らされた尻の狭間に、それが伝うのを見ていたら、またしたくなった。
「五年ぶりだ。一回ぐらいじゃ満足できない」
 建翔は羽純の片足を持ちあげて、半身を吊すようにすると、そのままうつ伏せにひっくり返した。
「ひぁ……っ」
 達したばかりで一息ついていた羽純は、いきなりの乱暴なしぐさに驚いた声をあげた。けれども、衝撃もすぐに快楽に切り替える。その証拠に眼差しから力が抜けていった。
 羽純はセックス中はどんなプレイも受け入れる淫らさがある。目玉を舐められて善がった男だ。建翔もそれがわかっているから行為に積極的になることができた。
 羽純が次を期待するように、腰から尻をおののかせる。汗と精液とシアバターで輝く肌が無尽蔵に卑猥だった。
「入れるときだけ、力抜いてくれ」
「……んッ」
 肩をすくめて、シーツを握る姿がいじらしい。建翔は自分の雄がまた硬くなるのを感じた。
 両親指を、尻の狭間にあてて横に広げる。穿孔の薄い皮膚が引っ張られ、腫れぼったくなった粘膜があらわになった。鮮やかな赤色に惹かれるように、そこに剛直をグリッとねじこむ。羽純が気持ちいいのか、きゅ、きゅと窄まりを絞る。その度に、こっちも脳天まで快感が突き抜けた。
「力抜いてくれよ」
 でないとすぐに達して、みっともないところを見せてしまう。
「……抜いてる」
 とろりとした表情で、相手が答える。口元がゆるんで白い歯が光ると、キスしたくてこらえきれなくなった。
 太いペニスをすべて相手の体内に沈めてから、建翔はゆるく腰を回しつつ相手の背中にのしかかっていった。
「なぁ」
 耳元に唇をよせてささやく。
「すげぇ、いい」
 甘い声が自然と漏れる。すると、腕の下の男も揺られながら頷いた。
「俺も」
 夢見るような表情をした相手の、薄い耳にキスをする。
「羽純」
「……ん」
 舐められないから、食む真似だけをした。
「俺、日本に戻ったら、すぐに身辺整理して、できるだけ早くこっちに戻ってくる」
「……」
 ゆったりと抜き差ししつつ、言い聞かせるようにして話す。
「だから、どこへも行かず、ここで待っててくれよな。もう勝手に移動したりするなよな」
「……ん」
 建翔は腕を伸ばして、羽純のあごを掴み、自分の方に振り向かせた。
「すぐに戻るから」
 そして唇を重ねる。羽純が口をあけて建翔を招く。建翔も口をひらいて、舌先だけ絡め合わせた。  
「わかった……」
 羽純が長いまつげを瞬かせて答える。やっと素直に答えるようになった相手に、頬がゆるむ。
 建翔は約束の印のように、己を奥深くまで差しこんだ。そうしてまた激しく抽挿する。相手の顔の横に手をついて、快楽を与えながら、自分もそれを貪った。
「……あ、あ、ああっ、い、イイっ、……それ、イイっ」
「っ、ッく……」
「ア、また、も、い、イくっ……」
「羽純、俺は、お前がいいんだよ」
「はぁ、はァ、ああっ……今仲、今仲っ」
「俺は、もうお前だけで……」
 相手の名前を呼びながら、奥深くで射精する。頂まで駆けあがり、空中に身を投げる。
 浮遊するのはほんの数秒で、その後は甘く重い自分の身体にぐったりとなった。
「……ああ」
 建翔が達するのと同時にシーツを濡らした羽純が、満足げなため息をつく。茫洋とした目で虚空を見ながら、胸を大きく上下させた。
「もう一度、お前と抱きあえるなんて。夢みたいだ……」
 快感の余韻で声を震わせながら呟く。
「今仲……」
 深く吐息をもらしてから、かすれた声で告白する。
「俺は、お前が欲しかった。……お前だけが、欲しくて、それさえあれば、他には何もいらなかったんだ」
 建翔は、羽純の今までの寂しさを思い、背後から両手で身体を包みこんだ。
「全部やるよ。お前に全てやる」
 だから、共に生きていって欲しい。これからの日々を。
「一緒に暮らそう」
「……」
「誰も俺たちを知らない場所で。世界の果てで」
 羽純は答えなかった。その代わり、小さく頷いた。
 涙をこらえているのか、声をだせなくなった唇に、自分のそれを重ねる。
 夜更けすぎの闇のなかで、建翔はふたりのこれからを思いながら、細い身体を抱きしめた。



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