ゆるキャラ系 童貞男子の喰われ方 番外編 03(R18)


 先にベッド行って待ってろ、という台詞はなんど言われても慣れなくて恥ずかしくなってしまう。
 上城が風呂に行くと、陽向は居間の隣の寝室に入った。自分用のスエットに着がえようとクローゼットの扉をあける。中には収納式衣装ダンスがあり、その一角に自分の物をおかせてもらっていた。ひきだしをあけて、「あ」と声をあげる。一番手前に新品の下着があった。まだ包装されたままのそれは、上城が数日前に「俺が買っといてやる」と言っていたボクシング練習時に着用するためのサポーターだった。
「買ってくれてたんだ」
 手に取って見てみる。それは濃いブルーの光沢のある素材で、陽向が日常はいているボクサーパンツとは違うビキニタイプだった。
 ジョックストラップと呼ばれる運動選手用に特化したそのストラップビキニは、前も後ろも個性的で、危ういぐらい生地が少ない。しかも、後ろから見るとストラップしかないOバックの状態で、ジムの着がえの際、上城がそれをつけているのを初めて見た時は、ビックリして鼻血が出そうになった。
「しかし派手だなー」
 袋からだして目の前に掲げてみる。今まで陽向には挑戦したことのないデザインの下着だ。
「ちょっと、どんな感じか試着してみよっかな」
 どうせ服を脱ぐのだし、クローゼットには細長い鏡もついている。似合わなかったらしまっておこう。そう考えて、全裸になると新しいビキニをはいてみた。
 鏡の前に立って、前や後ろをうつしてみる。
「ひやー。恥ずかしい」
 隠す部分が少なすぎだ。しかも、陽向がはくとカッコいいというより尻にリボン紐を巻いたゆるキャラっぽく見える。
「やっぱり、礎さんみたいにはならないもんだな」
 ファイティングポーズを取ってみるも、いまいち決まらない。
「俺がなんだって?」
「え」
 声がして振り返ると、そこに風呂あがりの上城が立っていた。下にスエットをはいただけの姿で、ポーズを取る陽向を口元に拳をあてて笑いをこらえるように眺めている。
「も、礎さっ」
 顔に火がついたように、ボッと真っ赤になった。
「い、いつからそこにっ」
「さっきから。てか、気に入ってくれたんだ」
「え、ええ。あ、いや」
 しどろもどろで前を隠そうと後ろを向いて、それじゃあもっと恥ずかしくなってしまうと気がついてウロウロしてしまう。
「似合ってるよ」
「いやそんな」
 コソコソと、逃げるようにベッドに中にもぐりこんだ。
「陽向、もっと見せてくれよ」 
 上城がベッドまでやってくる。
「ダメです。もうおしまいです」
 陽向は上がけをひっかぶって顔を隠した。
「脱ぎます。ホント勘弁してください。恥ずかしい……」
 ひとりで遊んでいたところを見られてしまうなんて。
「脱ぐなよ。脱がせるのは、俺だからな」
 嬉しそうに布団をはがされて、下のほうで赤い顔で丸まっているのを発見された。
「めちゃくちゃ似合ってるぞ」
「似合ってませんよぉ」
「しかしジムで他の男には見せたくないな」
 こんなエロい姿、と呟かれて陽向はさらに顔を赤くした。
「すぐに襲いたくなる」
 上城は上がけを放りだすと、陽向の上におおいかぶさってきた。
 体温の高い、大きな手で尻を包まれる。
「――あっ」
 なでられて、気持ちよさに睾丸がキュッと縮まった。
「……んっ」
 じわっと快感がわいてぶるりと震え、目を細める。上城は満足げな顔になった。
「ホント、こうなるとお前は可愛くなるよな」
 そう言いながら手を狭間に滑りこませてくる。ストラップビキニは尻が丸出しになっているから、いつもは隠れている場所がすぐに手が届くようになってしまっていた。 
「……あ、はふ」
「Oバックはヤバイな」
 丸みを擦りつつ、奥のとじた場所を親指で押してくる。ぐりぐりっとされて、陽向は身を竦ませた。
「んんっ」
「陽向、練習用のサポーターはまた違うデザインのやつ買ってやるから、これは、この部屋だけではくんだ。外じゃダメだ。わかったな」
「ん……、は、ふぁぃ」
 指が奥へと忍んでくる。快感を期待して、腰がふにふにと揺れてしまう。上城は片手でベッドのわきにおいてある小型のチェストのひきだしをあけた。前はこの部屋になかった小物入れは、陽向が泊まるようになってから買い足されたものだ。その中には、繋がるときに陽向を楽にするためのものが入っている。
 上城はローションとコンドームを取りだした。
 手にとろりと液体をたらすと、ふたたび孔に指を沈めてくる。クチクチと舌打ちを続けるような音をたてて、そうしながら腰のあたりに唇を落としてきた。陽向は腰まわりが感じやすい。舐められたり甘噛みされたりすると、どうにも気持ちよくなって声がもれてしまう。
「……あ、あ、あ……んっ……」
 小さな布に包まれた前の部分も、もうずいぶんふくらんできている。両足を擦りあわせるようにしていると、それを見た上城が苦笑した。
「もうちょっと焦らそうか」
「……なんで」
 前も早く触って欲しいのに。
「可愛いから」
 陽向は身体を小さく折り曲げた恰好で横向きに寝ていた。だから胸や腹は隠れていたが、背後は丸だしだった。さっきから恥ずかしくて顔は真っ赤だったし、今は意地悪されて目元も潤んでいる。情けない姿だという自覚はあるが、上城は陽向がこうなるといつも嬉しそうになるのだった。店では寡黙なバーテンダー、ジムではストィックなボクサーなのに、陽向をいじめるときだけは劣情を隠さない顔になる。エロくて煽情的で、なのにやっぱり恰好よくて、だから陽向もドロドロに蕩かされる。
 体勢をコロリとうつ伏せに変えられて、両足を広げさせられた。
「……あ、ふ」
 孔の奥を弄りながら、もう一方の手で内腿をなでてくる。歯を丸みのある肌に立ててくる。いちどにたくさん刺激されて、陽向は足を震わせて耐えるしかなかった。
「も、ダメ、も、ダメです」
「何が?」
「うう、だから」
「だから?」
「……さわって、ほし」
「どこを」
「も、もうっ、自分でさわっていいですかっ」
「ダメだ」
 情けない喘ぎがもれた。 
「もう、達っちゃうぅ」
 その瞬間、ギュッと、竿の部分を握られた。布の上から急激に扱かれる。
「あ、あ、ああっ――ああ、っ、やあっ――っ……」
 腰をわななかせて、陽向はビキニをはいたまま射精した。
「は、は、はああ、ぁ」
 上城は数本の指で奥を暴きつつ、達ったばかりの性器もやわく刺激する。新品の下着は、陽向の放ったもので濡れてしまった。
「もだめ、だめですっ」
 へなりと上半身をシーツに落とすと、指が抜かれる。首だけ回して後ろを振り返ると、上城がスウェットをおろして硬くなった自身を取りだしていた。いつ見ても隆々とした、立派な形の代物だ。付き合いはじめて数か月。最初は大きくて戸惑ったけれど、今では目にするだけで期待に胸がドキドキしてしまう。
 上城がコンドームを興奮した屹立に取りつける。膝立ちで自分の性器を握る姿は卑猥で頭に血がのぼった。腰を両手で掴まれて、上城の方に引きよせられる。ずるりと胴体が下に移動した。
「――あ」
 ぐい、と先端が中に喰いこんでくる。
「ぁ、あ、あ」
 浅く呼吸すると、喘ぎが喉奥からこぼれでた。ビリビリとした強い快感が、粘膜を犯してくる。少しずつ進んでくる熱塊に、陽向はこらえきれずシーツを強くつかんだ。
「ん、……っ」
「――っ、きつ……っ」
 上城も後ろで息をつめる。
「陽向、つらいか」
 上城が、身体を少し前に倒し気味にしてたずねてきた。
「だ、だい、じょう、ぶ」
 つらいけど、痛い訳じゃないから、と言いたす。
 感じすぎて、どうしていいか分からなくなっているだけだった。
「し、して」
 掠れはじめた声で、続きを促す。身体から力を抜けば、それが相手にも伝わったのか、上城は後ろで、自分も感じているというようにため息をもらした。
「やっぱ、お前、ヤバい」
「ええ……」
「して、とか言われたら、もうこっちもとまんねえ」
 そうして、上城はグイっと奥まで己を差しこむと、陽向の腰を強くつかんで更に肌をぴったりと密着させた。間をおかず激しく抽挿しだす。
「あ、あ、ああっ」
 襲いくる悦楽に、全身が痺れる。浅く深くえぐられて、感じるところを狙われて、嵐の中に放りこまれたように頭の中がぐちゃぐちゃになった。つながった場所が、抜き差しされるたびにいかがわしい音を立てる。それに煽られるのか、上城の動きが強くなる。なんども擦られ押されて引かれ、最後は訳も分からずいつの間にか泣いていた。
「あ、あっ、い、いいっ、は、はふ」
 息継ぎさえままならない。打ちこまれているうちに、快感で意識も朦朧としていた。
「――あ」
 突然、陽向の中を暴れまわっていた凶器が抜かれる。
「ひあっ」
 と思ったら、身体をくるりと回転させられた。仰向けにさせられ、今度は両足を持ちあげられる。上城は筋肉の張った腕で陽向の足をひらくと、そのまままた侵入してきた。
「あ、んっ」
 甘い悲鳴に、上城が口元をあげる。
「やっぱりこのほうがいいな」
「え」
「全部見えるから」
 そういって、陽向のビキニのゴム部分を指でさげる。濡れた先端だけが小さな布から顔をだした。上城は意地悪く、敏感なところだけを指先でなぶってくる。鈴口の切れ目の入った部分から天辺の小さな孔まで、なんども行き来させて陽向を快感に痺れさせた。
「やっ、あ……礎さっ、あ、それっ」
 両手をベッドに投げだして、身をよじるようにして悶える。
「い、いいっ、い、っ、よすぎて、つらいから……っ」
 また達きそうになる。涙声になった陽向に、上城も眉をよせて口元をいかがわしくゆがめた。
「最高に可愛いな」
 そう言うと、上半身を倒して、陽向にキスをする。舌先が触れあったとたん、限界がきた。
「――あ、もぅ」
 両手を伸ばして、上城の背中に縋る。ギュッとしがみつくと、その瞬間に吐精した。ビクビクッと全身がわなないて、か細い喘ぎをもらすと、上城も舌を絡めながら、手足の筋肉を強張らせた。
「――ん、んっ」
 身体の中で上城の剛直が痙攣する。それが断続的に、二度、三度。奥が小さく揺らされる。陽向の好きな感触だった。
「礎さん……」
 自分から相手の唇を食むようにすると、上城は舌を深く差しこんできた。口の中をなで回してくる。そうして唇を離すと、満足そうに笑った。
「やっぱお前がいちばん甘い」
 優しい笑顔になって、またキスをした。



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